抄録
切除不能の悪性胆道狭窄2例に対しGianturco型expandable metallic stent(EMS,Zstent)を経乳頭的に挿入し内瘻化を試みいずれも成功した.症例1は胆嚢を原発とし左右肝内胆管,総肝管及び総胆管まで浸潤する悪性腫瘍でありZ stentを挿入,60日後に原疾患そのものの進展により死亡するまで良好な開存性が維持できた.症例2は肝門部に位置する腫瘍で左肝内胆管が個々に断裂していたため,外側枝にダクロンファブリックで外張りしたZ stentを挿入,現在まで約90日間経過しているが,臨床経過は良好である.その間以前にはなかった右肝内胆管から総肝管までの狭窄が出現,Z stentを追加挿入したが,30日後の現在も開存性は順調である.EMSは従来のチュービング法に比し大口径によるドレナージが可能であり,特にZ stentでは多くの優れた点を有しているが経乳頭的挿入は未だ報告がなく,今回示した2例により今後は内視鏡的内瘻化法の選択がさらに拡がるものと考える.しかし,腫瘍の増殖による閉塞に関しては,症例2に使用したcovered stentを含め今後十分に検討しなければならない点が残されている.