日本消化器内視鏡学会雑誌
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早期胃癌に対する内視鏡的治療の補助化学療法に関する基礎的臨床的研究
寺下 史朗
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1993 年 35 巻 8 号 p. 1793-1807

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抄録
 早期胃癌に対する内視鏡的治療の補助抗癌化学療法として腫瘍選択性がありリンパ指向性の高い剤形による化学的リンパ節廓清法を考案した.Epirubicin(EPI)またはdoxifluridine(5'DFUR)を封入した多相(W/O/W)エマルションを作成し,その胃壁局所投与および経口投与の効果について基礎的臨床的研究を行った. 新しく作成したW/O/Wエマルションは平均粒径は2.63μmで良好な安定性を示し,colon26担癌BALB/cマウスを用いた検討で腫瘍選択性の向上を確認した. EPIW/O/Wエマルションの胃壁内投与を行った胃癌30例では,局注後5日目まで第1群リンパ節に244±240ng/g移行しており,リンパ指向性が向上した.5'DFURW/O/Wエマルションの経口投与を行った胃癌20例では,癌組織で約30倍,リンパ節でも約20倍と高濃度の移行を示した.すなわち,今回新しく作成したW/O/Wエマルションは優れた腫瘍選択性を有し,リンパ節指向性も飛躍的に向上し,副作用軽減につながる可能性も有し,内視鏡的治療の補助化学療法として有用であると思われる.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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