日本消化器内視鏡学会雑誌
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食道静脈瘤硬化療法後の経過中に生じた直腸静脈瘤出血の2例
藤川 亨大政 良二増田 勝紀蜂谷 公敏秋庭 宏紀宮本 兼吾藤崎 順子奥脇 秀一郎新井 弥生一之瀬 方紀子山本 学鈴木 博昭
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1994 年 36 巻 1 号 p. 51-57_1

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抄録

われわれは,1979年3月から1991年3月までの12年間に食道胃静脈瘤528症例に対し,1%Aethoxyskler-ol(AS)を用いた血管内外併用注入法による硬化療法を行ってきた.その経過観察中に直腸静脈瘤より大量下血をきたした2症例(0.38%)を経験した.緊急下部消化管内視鏡を行い,出血源として確認した直腸静脈瘤に対して0.5%のASを用いた血管外注入を主体とした硬化療法を行い止血および出血のコントロールに成功した.直腸静脈瘤の診断に関しては,痔核との鑑別点について文献的考察を行った.症例1は特発性門脈圧亢進症による食道静脈瘤の硬化療法後,1年6カ月後に下血をきたした.症例2は肝癌を合併した肝硬変による食道静脈瘤に対しての硬化療法を行った後,2年10カ月後に下血をきたした.直腸静脈瘤は比較的稀なectopic varicesの一つで,門脈圧亢進症の経過中に形成され,大量下血をきたすことがあり,門脈圧亢進症例の管理上留意すべき病態である.

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