日本消化器内視鏡学会雑誌
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腸重積にて発症し,大腸内視鏡検査にて術前診断が可能であった悪性リンパ腫の1例
中野 克哉石丸 寿美子山本 研冶上平 博司小西 英幸古谷 慎一福田 新一郎児玉 正加嶋 敬岡 隆宏
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1994 年 36 巻 1 号 p. 94-101

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抄録

胃に悪性リンパ腫の併存病変を認め,腸重積にて発症した回腸末端部の悪性リンパ腫の一例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.症例は29歳男性.主訴腹痛.CT,注腸造影,大腸内視鏡検査および生検にて回腸末端の悪性リンパ腫を先進部とした腸重積症と診断.胃にも併存病変を認め右半結腸切除術,幽門側胃切除術を行った.成人の腸重積症は慢性の経過を示すことが多く,原因不明の不定な慢性の腹部症状の経過中に,イレウスや下血にて緊急手術となることが多いため,一般に術前に腸重積症の先進部の質的診断に至ることは困難とされている.しかし,大腸内視鏡検査は先進部を直接観察でき,生検にて組織学的診断も可能であるため,質的診断には,大腸内視鏡検査が有用であり,患者の状態の許す限り積極的に大腸内視鏡検査を施行すべきである.また,消化管の悪性リンパ腫は一臓器内あるいは多臓器に多発することがあり注意が必要と考えられた.

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