日本消化器内視鏡学会雑誌
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イヌ急性虚血小腸病変の内視鏡的及び病理組織学的検討
―小腸組織血流量計測も含めて―
三富 弘之中 英男西山 保比古菅 知也西元寺 克禮
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1994 年 36 巻 5 号 p. 927-938_1

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抄録

 イヌ急性虚血小腸モデル(3,5,7,10時間群)で,その粘膜所見を経時的に内視鏡観察し,同時に生検組織採取と組織血流量測定を行い,虚血時間と組織障害の程度との関係について検討した.早期の虚血小腸の粘膜所見は,腸間膜付着反対側の縦走発赤とびらんで,虚血30分で出現した.組織学的には絨毛先端部の上皮の剥奪とうっ血であった.虚血3~5時間では粘膜全周性の変化となり,7時間以降は暗赤色調の粘膜で,高度のびらん,出血を伴い,組織学的には陰窩上皮深層に至る変性壊死と粘膜固有層内の好中球浸潤が特徴的であった.組織血流量回復率は7,10時間虚血再灌流群は3,5時間のそれに比し有意に低かった.再灌流後の粘膜所見は再灌流前に比し虚血性変化が増強した例が多く,虚血粘膜に対する再灌流障害を示唆した.以上の如く,虚血時間と組織障害の病理学的所見は,それぞれの条件に特有の所見を呈し,再灌流後の組織血流量の回復にも相違がみられた.

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