日本消化器内視鏡学会雑誌
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上部消化管出血に対する内視鏡的止血術の有用性と限界
―とくに胃・十二指腸潰瘍を中心に―
阪口 正博芦田 潔三好 博文杉 和憲岡 成樹松本 章夫浅田 修二平田 一郎大柴 三郎
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1994 年 36 巻 5 号 p. 965-971_1

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抄録

筆者らは,過去12年間に当科において施行された緊急内視鏡検査を対象に,上部消化管出血に対する内視鏡的止血術の有用性と限界について,胃・十二指腸潰瘍を中心に検討した.消化管出血を主訴に施行された緊急上部内視鏡は過去12年間で279例,378件であり,検査総数の約1%であった.検査総数は年次的に増加しているのに対して緊急内視鏡は1985年をピークに減少する傾向にあった.消化管出血例の疾患別内訳では,胃・十二指腸潰瘍が過半数を占めており,それらに対しては93.2%と高い内視鏡的止血率が得られていた.止血困難例を出血の重症度・合併疾患別に検討すると,全例,重症出血例であり,1例を除き多臓器不全や重症合併疾患を有する患者であった.純エタノール局注をはじめとする内視鏡的止血術は,胃・十二指腸潰瘍の出血に対して有用性の高い止血方法であったが,4回以上止血回数を増やしても止血率の向上は期待できず,手術可能例であれば3回をめどに手術を選択するべきであると考えられた.

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