1995 年 37 巻 2 号 p. 329-334_1
症例は53歳男性.腹水貯留のため近医を受診.腹水は利尿剤により改善したが,高度の胃食道静脈瘤が認められたため治療目的にて当科を紹介され入院となる.食道静脈瘤および噴門部から穹窿部へ連続する胃静脈瘤の両者を有する肝硬変例に対し経頸静脈的肝内門脈大循環短絡術(Transjugular Intrahepatic Portosystemic Shunt,以下TIPSと略す)を施行した.直接門脈圧は術前520mm水柱から術直後400mm水柱,術2週後には380mm水柱へと低下した.術後2週目に行った内視鏡検査では,胃食道静脈瘤の改善を認めた.超音波内視鏡検査(Endoscopic Ultrasonography,以下EUSと略す)を同時期に行い,胃壁内外の静脈瘤,合流血管および胃粘膜下拡張血管の改善を確認した.高度の胃食道静脈瘤に対しTIPSが有効であることが示唆され,TIPSの効果判定にEUSが有用と思われた.