日本消化器内視鏡学会雑誌
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大腸早期印環細胞癌を含む同時性多発癌(10病変)の1例
山下 拓鳴海 裕之鈴木 孝良和田 隆鈴木 弘之白井 孝之原澤 茂西 隆之野登 隆鬼島 宏三輪 剛
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1995 年 37 巻 5 号 p. 1028-1034_1

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抄録

大腸において計10カ所の多発癌を同時性に認め,うち1病変が早期印環細胞癌であった稀な症例を経験したので報告する. 症例は49歳男性で下腹部痛を主訴に来院した.注腸検査及び大腸内視鏡検:査で全結腸にわたり多発癌病変を認めた.Rbの病変(Isp,高分化腺癌,腺腫内癌)には0リペクトミーを施行し,他病変に対しては大腸亜全摘術を施行した.術後所見では,上行結腸に2型,1型,Isの3病変,右結腸曲にIs,左結腸曲に5型とIs,下行結腸にIIa+IIc,S状結腸にIs,Rsに2型,計9カ所の癌病変とS状結腸に腺腫4病変を認めた.組織型の内訳は高分化腺癌5病変,中分化腺癌3病変,印環細胞癌1病変であった.印環細胞癌はIsのm癌であった,本症例は,極めて稀な早期印環細胞癌を含み,異型性の強い腺腫から進行癌までの各段階の形態を同時性に認め,癌の発育・進展という観点から興味ある症例と思われた.

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