1996 年 38 巻 10 号 p. 2401-2406_1
1988年1月から1995年8月までの期間に,当院にて大腸癌治療(外科および内視鏡治療)後のサーベイランスを目的として1回以上の大腸内視鏡検査を行った124例のうち,11例に12病変の異時性癌の発生を認めた.異時性癌を認めた症例について,病変の深達度,肉眼形態,組織型を中心に検討した.異時性癌はすべて早期癌の状態で発見されており,しかも12病変中11病変はm癌であった.異時牲癌の肉眼形態は結節集簇様病変3病変,IIa3病変,IIc1病変,Ilc+IIa1病変,Is1病変,Isp2病変,Ip1病変であり,12病変中9病変(75%)は平坦な病変であった. このことより進行癌へいたる早期癌の形態はかなりの部分を表面陥凹型も含めた平坦な病変が占めると考えられた.以上より,サーベイランスはもとより,日頃の内視鏡検査においても平坦な病変を見落とさないような精度の高い検査を行うことが大腸進行癌を減らすうえで重要と考えられた.