日本消化器内視鏡学会雑誌
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食道静脈瘤硬化療法時EVISにて左胃動脈が描出され,その支配領域に巨大胃潰瘍を形成した1例
浅野 朗國分 茂博村上 匡人高田 雅博西元寺 克禮磯部 義憲
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1997 年 39 巻 12 号 p. 2397-2403

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抄録

 症例は59歳女性.1993年3月全身倦怠感にて当院消化器内科を受診,自己免疫性肝炎と診断された.内視鏡にてF3RC(++)の食道静脈瘤を認め,同年5月に内視鏡的硬化療法(Endoscopic Injection Sclerotherapy:EIS)を目的に入院した.その後,1994年1月と1995年3月に食道静脈瘤の再発を認め,2度のEISを追加施行した.1995年3月7日,EIS施行後,発熱を伴う心窩部痛が出現した.上部消化管内視鏡検査を施行したところ,胃噴門部から胃体中部小彎にかけて巨大な潰瘍が形成されていた. Retrospectiveに血管造影及び内視鏡的硬化療法時静脈瘤造影(EVIS)の所見を検討したところ,食道静脈瘤穿刺部より左胃動脈の分枝が描出されていた.描出動脈枝の支配領域は,巨大潰瘍を形成した部位と一致した.潰瘍の原因は,硬化剤が左胃動脈の分枝に注入された結果と考えられた.われわれのEVIS約400例の経験でも動脈枝内注入を確認し得た例はなく,稀な1症例と考え報告する.

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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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