抄録
内視鏡的胃粘膜切除術(ER)後に心臓自律神経機能に強い変化を認め,胸痛発作を認めた症例を2例を経験したので報告する.症例1:80歳男性.狭心症の既往あり.早期胃癌に対しER施行,術後4日目早朝に狭心発作が出現した.ホルター心電図法における心臓自律神経機能の指標であるRR間隔の標準偏差値(SDNN)はER後に著しい低下を認めた.症例2:58歳男性.肥大型心筋症あり.胃腺腫に対しER施行,術後4日目朝狭心痛を自覚.SDNNはER後基礎値の67%に低下しており,経時的な血中ノルエピネフリン測定では術後4日目にピークを認めた.心臓自律神経機能の指標であるSDNNの変化が強い事から,ER後の急性潰瘍が心臓交感神経機能を亢進させ冠攣縮を誘発したものと思われた.