抄録
症例は73歳,女性.胃に多発性の粘膜下腫瘍様病変を認め,胃全摘術を施行した.これら多発性病変は病理組織学的,免疫組織化学的に胃原発ポリープ状MALT型リンパ腫と診断された.しかしながら腫瘍細胞は粘膜内よりもむしろ粘膜下層に増殖の主座を有し,リンパ上皮性病変(1ymphoepithelial lesion:LEL)もわずかであることが特異であった.また検索し得た限りではHelicobacter pylori感染およびそれに伴う胃炎の存在を示唆する所見は確認されなかった.本症例におけるこれらの肉眼的,病理組織学的特徴は最近注目されつつある腸MALT型リンパ腫のそれに類似しており,胃に発生したポリープ状MALT型リンパ腫の臨床病理学的意義を考える上で示唆に富む症例と考えられ報告する.