日本消化器内視鏡学会雑誌
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十二指腸粘膜生検にて診断しえた重症糞線虫症の1例
杉田 博二高田 義雪中西 淳美菊池 博松下 肇
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1998 年 40 巻 8 号 p. 1190-1195

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抄録
 症例は67歳男性で主訴は嘔吐,食欲不振.平成8年5月頃より食欲不振及び10kg以上の体重減少を認め近医よりの紹介にて6月27日来院した.理学的所見では著明な低栄養状態を認め便潜血反応陽性であった.血液検査にて著明な低アルブミン血症を認めた.上部消化管内視鏡検査では幽門輪の消失,胃前庭部より十二指腸水平部にかけての粘膜の浮腫状肥厚,発赤,びらん,硬化,不整潰瘍,偽ポリープ,易出血性,大量の腸液を認めた.同部の粘膜生検で多数の寄生虫体を認め,その形態より糞線虫症と診断した.初回の内視鏡検査では十二指腸の管腔の振張を認めたが2度目の内視鏡検査では逆に管腔の狭小化を認めた.大腸内視鏡検査では下行結腸から上行結腸にかけ粘膜面は浮腫状で多数のびらんを認めた.胸部CTスキャンでは両側に多量の胸水貯留と右上・中葉に浸潤影を認めた.HTLV-1は256倍以上であった.thiabendazole1500mg/dayを3日間,3クール行うも,肺炎,呼吸不全にて死亡した.内視鏡的十二指腸粘膜生検にて診断しえた重症糞線虫症の1例を内視鏡所見を中心に報告する.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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