1999 年 41 巻 12 号 p. 2520-2525
症例は53歳,女性.軽度の貧血の精査中に胃前庭部に径3.0cmの粘膜下腫瘍を指摘された.EUSでは第2-3層を中心とした低エコーで辺縁に結節状陰影を伴っていた.経過観察を指示するも患者は来院せず,9カ月後心配になり来院した.このとき腫瘍は径6.0cmと増大していたので,手術を勧めたが家人(夫)の強い反対で以後来院しなくなった.初診から13カ月後,腹部腫瘤の増大があり,他院を受診した.CT,MRにて腫瘍は腹部全体を占める巨大な腫瘍としてみられ切除不能であった.開腹生検による病理学検査にてF-8,CD34染色にて陽性であり,angiosarcomaと診断された.本例の報告は稀であるが,EUS所見は特徴的であり,また粘膜下腫瘍の経過観察上示唆・教訓に富む症例であり報告した.