1999 年 41 巻 12 号 p. 2514-2519
症例は72歳女性,胃角部前壁に20×13mmの粘膜下腫瘍様の隆起性病変を認めた.鉗子生検にて診断がつかないため内視鏡的胃粘膜切除(多分割切除)にて病変を切除した.切除標本では著明なリンパ球浸潤をともなった大型の異型細胞がみられ悪性リンパ腫が疑われたが,免疫染色にてリンパ球はmonoclonarityを示さず,異型細胞はケラチン陽性で,最終的に粘膜下腫瘍様形態を示したいわゆるリンパ球浸潤性髄様癌と診断した.また,EBER(EBV-encoded small RNA)-1 ISH(in situ hybridization)陽性でEpstein-Barr virus (EBV)関連胃癌であった.上記の診断のもと胃亜全摘術を施行したが,病変の遺残はなく,リンパ節転移もみられなかった.過去の報告によれば,リンパ球浸潤性髄様癌あるいはEBV関連胃癌の早期癌にはリンパ節転移はなく,局所切除のみで治癒できる可能性がある.