2000 年 42 巻 1 号 p. 20-26
症例は48歳男性.飲酒後に少量の吐血とともに,約40cmの粘膜様白色索状物を吐出したため,精査加療目的で当院に入院した.上部消化管内視鏡検査では,食道のほぼ全長にわたる全周性の粘膜剥離を認めた.食道粘膜の生検組織像では,基底層上部に裂隙形成と棘融解細胞を認め,蛍光抗体直接法では,粘膜上皮細胞間にIgGの沈着を認めた.さらに,抗表皮細胞間抗体に対する蛍光抗体間接法も陽性であり,尋常性天疱瘡による剥離性食道炎と診断した.絶食のもとIVH管理を行い,H2-blocker,ステロイド治療により食道粘膜病変は治癒し,蛍光抗体直接法および間接法ともに陰性化した.現在までに報告されている食道病変を伴う尋常性天疱瘡45例についての文献的考察を加えて報告した.