日本消化器内視鏡学会雑誌
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高張ナトリウムエピネフリン液(HSE)局注療法か有用であった十二指腸憩室出血の1例
北澤 利幸森村 昌史松為 裕二福井 博
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2000 年 42 巻 2 号 p. 159-163

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抄録

 症例は66歳,女性.吐下血を主訴に来院.緊急上部消化管内視鏡検査を施行したところ,食道および胃には出血源となる病変はなく,十二指腸下行脚の憩室内からoozingを認めた.憩室内を洗浄観察したが露出血管は明らかでなく,憩室内粘膜の一部から出血が持続するため出血点に対して5%HSEを0.5ml局注して止血を試みた.局注後には止血され,憩室内に出血源と思われるびらんが観察された.十二指腸憩室びらんからの出血に対する緊急止血としてHSE局注療法は有用であった.また,HSE局注後に膵炎を合併したが,内科的治療により速やかに改善した.膵炎の原因は明らかではないが,傍乳頭憩室の場合,憩室が膵臓に近接しているため,局注後に膵炎を合併した可能性が考えられる,十二指腸憩室出血に対して局注療法を施行するにあたっては,穿孔以外に膵炎の合併にも注意が必要である.

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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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