抄録
非ステロイド系消炎鎮痛薬NSAIDsの重篤な副作用の一つに胃十二指腸粘膜病変があり,欧米をはじめ,わが国でも致死的な経過をとる症例も少なくない.NSAIDsの標的分子の一つにcyclooxygenase(COX)に2つのアイソザイムがあり,炎症組織ではCOX-2が高発現していることから,より副作用の少ない抗炎症薬を目指し,COX-2特異的阻害薬が開発され,臨床応用されている.腫瘍組織でもCOX-2が高発現しており,NSAIDsの常用者では消化器悪性腫瘍の罹患率が低いことから,NSAIDs・COX-2特異的阻害薬の抗腫瘍治療薬としての適応拡大を目指し,種々の検討が行われている.本稿では,このような消化器疾患におけるCOXの関与について最近の知見を概説する.