2004 年 46 巻 10 号 p. 2291-2297
症例は73歳男性.高血圧にて通院中であったが緩下剤などの服用はなかった.数日来の便通異常ののち突然の下腹部痛が出現し入院した.第2病日に少量の下血があり全大腸内視鏡検査にて下部直腸主体に発赤や白苔をともなう全周性のびらん,浅い潰瘍を認めた.組織学的には虚血性変化であり,便培養で陰性であることや抗生剤の使用も無いことから虚血性直腸炎と診断した.直腸周囲に異常血管はなく原因は不明であったが,発症前の便通異常による腸管内圧上昇や糞塊の圧排による腸管壁血流障害が誘因として考えられた.