抄録
症例は60歳,男性.胸のつかえ感,体重減少を主訴に受診された.上部消化管内視鏡検査にて,胸部中部食道前壁に基部を持ち,分葉構造を伴う25mm大の亜有茎型腫瘤を認めた.ヨード撒布像では,腫瘤部およびその周辺粘膜は広範に不染であった.生検では扁平上皮癌と診断され,胸部食道胃噴門部切除術を施行した.切除標本の病理組織所見では腫瘤周辺の広範なヨード不染部は角化傾向を示す扁平上皮癌,亜有茎腫瘤部は類基底細胞癌で深達度は大部分で粘膜下層,ごく一部に固有筋層に浸潤していた.類基底細胞癌の形態は一般に上皮下腫瘤型を呈することが多いとされ,これはこの腫瘍が粘膜下層を中心に発育進展するためと考えられている.本例では,急峻な立ち上がりを示す亜有茎型の形態を示しており,類基底細胞癌の内視鏡診断の際に注意を促す症例と考えられた.