抄録
症例は56歳の男性.吐血とタール便を主訴にショック状態で来院した.緊急内視鏡で噴門直下小彎後壁よりに露出血管を認め,Dieulafoy潰瘍と考えクリップにて止血した.1週間後にはクリップの口側にビランを認め,同部の生検で中分化腺癌と診断された.3週間後にはO IIa+IIcの形態となり,クリップは陥凹部の肛側端に認められた.噴門側胃切除術を行い,病理診断では深達度MPで癌病巣内の粘膜下層に太い動脈を認め,これが浅い潰瘍部で破綻したことが確認された.Dieulafoy潰瘍様所見を呈する胃癌では初回内視鏡で癌の存在を診断されない場合も多い.Dieulafoy潰瘍と診断した症例の内視鏡的止血後には,経過を追って内視鏡観察が必須であり,必要なら生検も行うことが重要と思われた.