2006 年 48 巻 1 号 p. 43-50
症例は62歳,男性.便柱狭小化を主訴に受診し当院にて大腸内視鏡検査を受けた.下行結腸に金周性狭窄を来した2型進行癌を認めた.周堤表面には白色の小顆粒が多数観察され,癌性潰瘍底も通常の大腸癌に比し白色調が強く易出血性に乏しかった.生検で扁平上皮癌の診断が得られ,他臓器に明らかな原発巣ならびに転移巣を認めず,大腸原発の扁平上皮癌と診断し左半結腸切除術を施行した.組織学的には大部分が高分化扁平上皮癌で,一部に腺癌成分を認めた.扁平上皮癌と腺癌との移行部も観察された.リンパ節転移はすべて腺癌成分によるものであった.術前にscc抗原は8.8ng/mlと高値を示したが,以後は0.8と正常化した.術後4カ月に小腸転移,8カ月に腹壁転移を来した.内視鏡的に白色構造物が観察された場合,扁平上皮成分を考慮すべきである.組織由来は先ず腺癌として発生し,一部が扁平上皮癌化し腺癌成分を上回り増大,発育したものと考えられた.