2007 年 49 巻 11 号 p. 2825-2833
症例は17歳時から食道アカラシアの既往のある60歳台の男性.食道造影では胸部下部食道が対称性に狭小化し,拡張した口側食道に楕円形で可動性を有する隆起性病変を認めた.内視鏡検査では食道全体に白色粘液が付着し,頭部が白色で可動性を有するIp型病変を認めた.十分な前処置後の観察では,狭窄部を含め白濁肥厚した粘膜と,発赤調で地図状の浅い陥凹面や不整なびらんが多発していた.ヨード染色でも不染ないし淡染を呈し,拡大観察でも不整な乳頭内血管が観察された.病理組織学的にはIp型病変は主に低分化型扁平上皮癌から成り,一部には多彩な組織像を示す紡錘型細胞癌も認め両者の移行部分も観察されたためいわゆる癌肉腫と診断した.多発するIIcないしIIb病変はm2までの扁平上皮癌であった.食道壁は筋層が著しく肥厚し定型的なアカラシアの組織像であった.食道アカラシアに癌肉腫などIp型食道癌が合併した報告は無く,極めて稀な症例と思われ報告した.