2008 年 50 巻 11 号 p. 2845-2851
症例は75歳男性.心窩部痛,下腹部痛,便秘を主訴に来院.内視鏡検査にて,胃粘膜の退色調変化と不整な地図状の多発性潰瘍,回腸末端部での浮腫状変化が認められた.いずれの病変での生検からも著明な炎症細胞浸潤像とともに免疫組織化学的にTreponema pallidumが証明された.血清梅毒反応は高値を示し,皮膚科的にも硬性下疳,梅毒性乾癬が確認された.駆梅療法により臨床症状は速やかに軽快した.血清反応の陰性化を確認し治療終了とした.消化管梅毒は主として胃において報告されているが回腸病変での報告は極めて稀である.梅毒は全身性疾患であり,内視鏡検査が診断の契機となりうること,消化管のあらゆる部位で病変が形成されうることを念頭に置いた診療が重要である.