2018 年 15 巻 1 号 p. 57-62
肝切除後胆汁漏はもっとも術直後の患者の QOLを下げ,医療費を押し上げる要因である。その頻度は 4~ 12.8%といわれている。肝管空腸吻合が加わるとその頻度はさらに増加する。肝切除例 530例の胆汁漏,腹腔内膿瘍発生率を単純肝切除と胆道再建のある肝切除に分類し検討した。単純肝切除例は胆汁漏 20例(4.3%),腹腔内膿瘍 5例(1.1%)であり,胆道再建例はそれぞれ 13例(21.7%),2例(3.3%)であった。胆道再建例は胆汁漏の発生は多いが,閉鎖式吸引ドレーンにより腹腔内膿瘍は減らせると思われる。腹腔内ドレーン排液の培養においては胆道再建例では100%陽性であり,腸管由来と考えられる腸球菌,緑膿菌,クレブシェラ属,エンテロバクター属などが起炎菌であった。胆道再建のある肝切除例は胆汁漏の発生は高く,ドレーンなどにより腹腔内膿瘍の予防が重要である。