日本外科感染症学会雑誌
Online ISSN : 2434-0103
Print ISSN : 1349-5755
原著
皮下ドレーンと皮膚接着剤を用いた人工肛門造設時の創感染予防の工夫
吉松 和彦伊藤 嘉智今泉 理枝佐野 恵美小寺 麻加浅香 晋一佐竹 昌也木下 淳小池 太郎横溝 肇成高 義彦
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2018 年 15 巻 2 号 p. 117-121

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抄録

【はじめに】今回,人工肛門造設時の SSI予防策として行われていた真皮縫合に創感染予防の工夫として,閉鎖式皮下ドレーン留置と皮膚接着剤を追加し,切開創 SSI予防効果について検討した。【対象・方法】対象は 2012年以降に施行した人工肛門造設を伴う手術症例の 76例である。サーベイランス開始時より皮下高圧洗浄開始,2014年より真皮縫合を,2015年 4月以降は皮下ドレーンに皮膚接着剤を追加した。【結果】年齢中央値は 70(32~94)歳,男性 52例,女性 24例。手術時間中央値は 132.5分,ASA 3以上が 28例,Risk index 2以上が 23例,創分類は3・4が 31例,緊急手術が 34例であった。真皮縫合導入後が 47例,皮下ドレーン+皮膚接着剤導入後が 18例であった。全体の切開創SSI発症率は 31.6%で,創分類3・4,ASA 3以上,Risk index 2以上,緊急手術は創感染の危険因子ではなかった。真皮縫合導入前が 41.4%,真皮縫合導入後皮下ドレーン+皮膚接着剤導入前が 34.5%,皮下ドレーン+皮膚接着剤導入後が 11.1%と皮下ドレーン+皮膚接着剤導入後の切開創 SSI発症率が減少傾向であった。真皮縫合の有無では創感染率に差はなかったが,皮下ドレーン+皮膚接着剤で有意に創感染は低率( P=0.0220)であった。【結語】SSIサーベイランスにより人工肛門造設時の創閉鎖には,皮下ドレーンを留置し,真皮縫合,皮膚接着剤を使用することが現時点では創感染の予防につながると考えられる。

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© 2018, 一般社団法人 日本外科感染症学会
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