【はじめに】肝切除術における腹腔ドレーン留置は不要との報告が多いが,必要な症例も少なからず存在する。今回,当院における腹腔ドレーンの使用状況および腹腔ドレーン留置を要する因子について検討した。【方法】①肝細胞癌肝切除 182例のうちドレーン留置群 110例,非留置群 72例を対象に,腹腔ドレーンの使用状況について比較検討した。②ドレーン留置群のうち抜去困難 12例,抜去後再留置 6例,ドレーン非留置群のうち追加留置 2例の計 20例をドレーン必要群とし,ドレーン不要群 162例を対照に周術期因子について比較検討した。【結果】①ドレーン留置群で系統的切除が多く(61% vs 44%;P=0.016),手術時間,出血量についても有意に多く(344 vs 264.5min; P=0.004,879.5 vs 328mL; P<0.001),合併症もドレーン留置群で 22人(20%)と多かった( P=0.008)。②ドレーン必要群において ASA-PS Class 3症例が多く(45% vs 21%; P=0.051),肝機能はAST,総ビリルビン値が高かった(44.0 vs 31.5IU/L;P=0.031, 1.0 vs 0.8mg/dL; P=0.050)。手術因子では,ドレーン必要群で片肝切除以上が多く(55% vs 23%;P=0.005),手術時間,術中出血量も有意に多かった(404 vs 288min; P<0.001, 1,293 vs 532mL; P<0.001)。多変量解析により,腹腔ドレーン留置を必要とする因子に, ASA-PS Class 3,AST上昇,多い出血量が同定された(P=0.045,0.040 and 0.029)。【結語】肝切除の多くはドレーン非留置が可能だが,肝障害,多い術中出血量,長時間手術に加え, ASA-PSの高い症例では腹腔ドレーン留置が必要と考える。
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