2019 年 16 巻 1 号 p. 47-59
胸骨正中切開による心大血管術後深部胸骨創感染(縦隔炎・胸骨骨髄炎)は,その発症率は低いもののまだまだ死亡率が高く,留意すべき合併症の1つである。リスク因子として,術前因子:糖尿病,肥満,慢性閉塞性呼吸障害,喫煙歴,ステロイド使用,高齢,心不全,心機能低下,腎機能低下あるいは透析例,抗血小板剤投与,長期の入院日数,緊急手術,術中因子:両側内胸動脈使用,長時間の手術・人工心肺時間・心停止時間,再開胸止血術,不十分な胸骨閉鎖,術後因子:術後呼吸不全,長期の人工呼吸器管理,気管切開術,長期 ICU滞在などが報告されている。最近では深部胸骨創感染の発症率を予測する Med-Score 24が報告された。心大血管手術を行う症例はこれらのリスク因子を多数有した症例が多く,深部胸骨創感染発症が避けられない場合もある。その発症率を少しでも下げられるようにリスク因子を十分理解し,対策を講じることが重要と考える。