日本外科感染症学会雑誌
Online ISSN : 2434-0103
Print ISSN : 1349-5755
症例報告
切除不能膵癌に対する化学療法中に Clostridium perfringens感染による肝ガス壊疽を生じ急激な経過で死亡した1例
江藤 亮大郎吉富 秀幸髙屋敷 吏賀川 真吾古川 勝規久保木 知高野 重紹大塚 将之
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2019 年 16 巻 1 号 p. 75-79

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抄録

症例は74歳,男性。膵癌の診断で当科紹介され,精査で閉塞性黄疸を伴う局所進行膵癌と判断し,胆管ステントを留置後に化学療法を開始した。治療開始後31日目に38度の発熱を認め,その2日後に意識障害をきたし救急搬送された。血液検査で高度のアシドーシスと溶血性変化を,CTで肝後区域にガス像を伴う腫瘤性病変と肝内胆管気腫を認めた。検査直後に心肺停止状態となり,蘇生を試みるも来院2時間後に死亡した。血液培養からはClostridium perfrin-gens(以下,CP)が検出され,同感染に伴う肝ガス壊疽,敗血症と最終診断された。CPによる肝ガス壊疽は一旦発症すると急激な全身状態の悪化から致死的経過をたどることが多く,膵癌患者,とくに胆道ドレナージを有する症例に対する集学的治療中に感染兆候を認めた場合,本感染症発症の可能性を念頭に置き早期診断,治療介入をすることが今後の課題と考えられた。

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© 2019, 一般社団法人 日本外科感染症学会
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