2019 年 16 巻 4 号 p. 229-234
大腸術前の経口抗菌薬による腸管処置については,日本では1980年代以降に術前の2~3日間経口抗菌薬を使用したことによる重症腸炎の合併症例が報告され,その後術前の経口抗菌薬の使用が減少していた。近年多くのガイドラインで,術前日のみの経口抗菌薬の使用が推奨されるようになり,今後使用頻度が増加すると考えられる。一方,Clostridioides difficile (CD)に代表される,抗菌薬の使用に関連して発生する腸炎については世界的に問題となっている。最近の無作為化比較試験の結果では,術前経口抗菌薬を使用した場合のCD感染症の発生割合は0.11%程度で,これまで危惧されているよりは低い発生割合である。しかし,今後経口抗菌薬の使用量が増加することが予想されるため,注意しておくべき腸炎に関連する知見をまとめる。