2020 年 17 巻 1 号 p. 8-19
【目的】当施設における心大血管術後の深部胸骨創感染(以下,DSWI)の死亡因子を評価するとともに有用な治療方法を評価した。【対象・方法】1991年から2019年8月の間で胸骨正中切開による心大血管術後,外科的治療を要したDSWIを発症した84例を対象とした。2006年以前は連日洗浄後に,2007年以降は持続陰圧吸引療法(以下,NPWT)後に,単純閉鎖あるいは充填術を施行した。【結果】DSWI死亡は17例(20.2%)認めた。多変量解析で女性,年齢,透析例,術後脳障害発症,MRSA感染がDSWI死亡の独立危険因子であり,NPWT,充填術が死亡率を下げる独立因子であった。治療方法ごとの成績では充填術が有意に死亡率を下げる治療法であった(P=0.002)。一方MRSA DSWIにおいては,NPWTが有意に死亡率を減少させるものであった(P=0.003)。【結論】NPWT,充填術はDSWI死亡率を減少させる独立因子であり,NPWT後に充填術(bridge therapy)を施行することで根治的治療につながり,DSWIの死亡率を減少させる有益な治療方法と考えられた。