2022 年 18 巻 3-4 号 p. 339-345
2016年に敗血症(sepsis)の定義と診断がSepsis-3として新しく公表され,日本版敗血症診療ガイドラインおよびSurviving Sepsis Campaign guidelines(以下,SSCG)は,Sepsis-3に準じて敗血症の定義を「感染に対する調節不全の宿主応答によって引き起こされる生命を脅かす臓器不全」としている。敗血症の診断においてもSepsis-3に準じて,病院外,外来,また一般病棟で感染が疑われる成人ではquick SOFAスコア(以下,qSOFA)を用いることをガイドラインで推奨してきた。そして,集中治療室ではSequential[Sepsis-related]Organ Failure Assessment(SOFA)スコアの2ポイント以上の急上昇をもって,臓器不全の進行とし,敗血症を確定診断している。その上で,敗血症性ショックは,深刻な循環障害,細胞障害および代謝異常を示し,高い死亡リスクとして敗血症の1つの区分としている。輸液蘇生をしても平均動脈圧を65mmHg以上,あるいは血清乳酸値を2mmol/L(18mg/dL)以下を維持できずに血管作動薬を必要とする場合に,敗血症性ショックと診断される。以上の敗血症の定義と診断において,診断に用いるqSOFAの感度の低さが問題とされている。SSCG2021では,敗血症や敗血症性ショックのスクリーニングツールとしてqSOFAを単独で使用しないことが推奨された。qSOFAの評価にあたっては,qSOFAを評価するタイミングやqSOFAを反復して評価する必要がある。敗血症診断後の院内死亡などの可能性については,感染症管理および多臓器管理の治療面での一層の充実が期待される。