日本外科感染症学会雑誌
Online ISSN : 2434-0103
Print ISSN : 1349-5755
総説
当院の血管外科領域における腹壁瘢痕ヘルニアの現状
山根 心藤井 弘通森崎 晃正柴田 利彦
著者情報
ジャーナル フリー

2023 年 19 巻 4-5 号 p. 389-392

詳細
抄録

【背景】腹部正中切開で行う術後の腹壁瘢痕ヘルニアは頻度の高い術後合併症のひとつである。腹部大動脈瘤手術後ではその頻度がさらに高いと報告される。そこで当院で行った腹部大動脈瘤に対する術後の腹壁瘢痕ヘルニアの発症状況を調査し,その危険因子について検討した。【方法】当院で2015年1月から2020年8月までに腹部大動脈瘤に対し腹部正中切開で人工血管置換術を行った100例を対象とした。周術期の因子について,腹壁瘢痕ヘルニアを術後合併した群(H群)16例と合併しなかった群(N群)84例の二群間で比較した。【結果】二群間の比較では,H群で75歳以上の高齢者の割合が高かった。また,H群では有意にCOPDの罹患率が高く,SSIの発生が多かった。多変量解析では75歳以上の高齢者,COPDの罹患が独立した危険因子であった。【まとめ】当院での腹部大動脈瘤術後の腹壁瘢痕ヘルニアの発症率は16%であり,その危険因子は年齢が75歳以上,COPDの罹患であった。

著者関連情報
© 2023, 一般社団法人 日本外科感染症学会
前の記事 次の記事
feedback
Top