現代ファイナンス
Online ISSN : 2433-4464
論文
日本における窓口指導と「バブル」の形成
証言方式を応用した実証分析
リチャード A ヴェルナー
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ジャーナル オープンアクセス

1999 年 5 巻 p. 17-40

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抄録

金融政策ツールに関する論文のほとんどは,「公式」な政策手段をめぐるものである.しかし,金融当局が民間部門の行動に影響を与える重要な「非公式」の手段が存在する.本稿では,日本の中央銀行が用いてきた金融政策の非公式の手段である,いわゆる「窓口指導」による信用規制の役割を検討する.「窓口指導」は超法規的政策手段であるため,その実施過程の解明には一次的・ニ次的な現場の証言を活用する.我々は,1980年代後半に実際の「窓口指導」に関与した中央銀行や民間銀行の担当者に直接インタビューを行った.調査の結果判明したのは,一般的な見解とは異なり,「窓口指導」は1980年代を通じて実施され,極めて有効であったということである.バブル時期の銀行貸出量は完全に日銀の信用統制で決定され,不動産向け等の過剰貸出現象は日銀の「窓口指導」の結果であった事も明確になった.最後に本稿では,政策的な意味合いを指摘している.

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© 1999 日本ファイナンス学会/MPTフォーラム
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