日本プライマリ・ケア連合学会誌
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原著(事例報告)
慢性ブロム中毒の存在が甲状腺クリーゼと誤認させたバセドウ病の1例
児玉 憲一夜西 麻椰北川 奈津子清水 彩永江川 克哉
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2023 年 46 巻 3 号 p. 107-111

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抄録

症例は50代,女性.頭痛,嘔気などを主訴に受診.血液検査での甲状腺中毒症及びTSHレセプター抗体陽性,甲状腺の超音波検査所見からバセドウ病と診断した.入院の上でチアマゾールにて治療を開始したが入院後に幻視や幻聴などの精神症状が出現し甲状腺クリーゼの診断基準を確実例として満たした.チアマゾール増量とヨウ化カリウム追加で対応したが,甲状腺機能改善下での精神症状出現に違和感を持った.血液検査を見直して気づいた偽性高クロール血症を端緒に市販のブロムワレリル尿素含有鎮痛薬乱用が判明,一連の精神症状は慢性ブロム中毒の離脱によるものが疑われた.向精神薬開始により精神症状は軽快,甲状腺機能については以降も順調に改善して退院した.甲状腺クリーゼは早期に疑い治療を開始すべき病態であるが,甲状腺疾患に精神症状を来す他疾患が併発すると診断基準偽陽性となることに注意が必要であると考える.

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© 2023 一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
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