言語研究
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Print ISSN : 0024-3914
特集 言語獲得
単一項文の理解から探る幼児の格助詞発達
鈴木 孝明
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2007 年 132 巻 p. 55-76

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抄録

幼児の格助詞に関する文法知識とその運用能力を探るため,他動詞の項が文中にひとつしか現れない単一項文を対象として,絵画選択法を用いた文理解実験を行った。第1実験で年長児は9割以上の正解率を示したが,年少児と年中児の正解率は全体的に低く,対格を含む単一項文の理解には多くの誤りが見られた。この誤りが文法知識を反映した結果なのか,運用に係わる動作主バイアスが原因なのかを探るため,第2実験では単一項文に先行文脈を与えて運用上の要因を取り除こうと試みた。その結果,正解率は年少児で6割程度,年中児で8割程度にまで伸び,主格と対格における差は見られなくなった。よって,文法知識の発達における主格と対格の差はないが,5歳前半までの幼児は,格助詞「が」と「を」の文法知識において未だ発達過程にある可能性があると考えられる。

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© 2007 日本言語学会, 著者
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