2007 年 132 巻 p. 29-53
日本の子どもの初期の語彙の構成を日本語マッカーサー乳幼児言語発達質問紙(JCDIs)標準化データ,縦断データ,横断データから明らかにした。特に子どもの初期の語彙が名詞優位か動詞優位かの問題を検討した。第1にJCDIsで語彙の構成を調べた結果,名詞が一番高い比率を占めていた。第2に,JCDIsで20ヶ月児158名の名詞,動詞,形容詞,閉じた語の語彙の構成を調べた結果,名詞の比率が高く,Bornstein et al.(2004)の7カ国の結果と一致していた。第3に2名の子どもの縦断データから語彙急増期の後は名詞優位,その後,文法発達に伴い動詞優位になることを明らかにした。母親の語彙は動詞優位であった。第4に,31名の日本の子どもと養育者の玩具場面と絵本場面の観察では絵本場面では一貫して名詞優位であったが,玩具場面では言語発達に伴い動詞優位に移行していった。玩具場面の養育者の発話は動詞優位で子どもの結果とは一致していなかった。以上の結果から,言語発達初期の子どもは名詞を学習しやすい概念的な傾向を有していると結論づけた。最後に名詞優位を引きこす語学習のメカニズムについて論じた*。