抄録
国連・障害者権利条約・第23条「家庭及び家族の尊重」,第25条「健康」,ならびに,世界性の健康学会・性の権利宣言等に,障害のある人における性と生殖に関する健康と権利(以下,SRHR)が謳われている.しかし, 今なお知的障害がある者(以下,知的障害者)における性に関する偏見は根深く,支援者や親は,青年期以降のライフコースにおいて標準的出来事であるはずの結婚,その前提としての異性とのかかわりを,知的障害者のライフコース上にありうる出来事とは位置付けていない5).
他方,知的障害者の性知識に係る先行研究では,既婚・未婚,性別によらず,避妊・妊娠の知識は自力での獲得が難しい実態がうかがえる1)4).さらに就労支援事業所を対象とした調査では,知的障害のある利用者の性行為等に関する事例が数多く確認されているが2),9 割の事業所は性教育を行っていない3). 本企画はこれらの実態をふまえ,知的障害者のSRHRについて検討することを目的として行った.