2010 年 137 巻 p. 65-79
本研究では,芋,蕎麦,米,麦,黒糖の5種類の第1要素が第2要素である焼酎の連濁に対してどのように影響するかを鹿児島,大分,福岡,山口,広島,静岡の6つの方言地域で調査した。405名に対して質問紙調査を行い,5種類の第1要素と6種類の方言地域の2つの変数が焼酎の連濁の有無(/s/または/z/)を予測するかどうかについて,決定木(decision tree)分析によって検討した。その結果,焼酎の連濁の予測には,第1要素の焼酎の種類が有意な影響力を持っていた。焼酎の連濁頻度は,決定木分析のデンドログラムに示したように(Figure 1を参照),4つのグループに分かれた。まず,(1)芋焼酎の連濁が93.83%で最も多かった。次に,(2)米焼酎が88.89%,蕎麦焼酎が84.69%と同程度の連濁頻度であった。さらに,(3)麦焼酎が72.59%とやや低かった。最後に,(4)黒糖焼酎が56.44%であり,ランダムの50%に近い連濁頻度であった。一方,6つの方言地域は,焼酎の連濁頻度に影響しないことが分かった。少なくとも,焼酎の連濁については,地域差がないようである。