言語研究
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「以上(に)」「ぐらい」を用いた比較文の前提について―Hayashishita(2007)の批判的検討―
窪田 悠介
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2012 年 141 巻 p. 33-47

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抄録

本論文では,Hayashishita(2007)の「以上(に)」「ぐらい」を用いた比較構文の分析の妥当性を検討する。Hayashishita(2007)は,「AはB以上に/ぐらいPだ」という文には通常の比較構文にはない「AとBがともに属性Pに関して平均基準を越えている」という含意があることを根拠に,これらの構文をcomparison of deviation,つまり,要素A,Bに関して,平均基準をどれだけ越えているかを比較する構文として分析している。本論文では,要素Aと要素Bに関して「平均基準を越えている」という含意のステータスに関して違いがあることを示す新しいデータを提示し,Hayashishita(2007)の分析がこれらのデータに関して誤った予測をなすことを示す。さらに,本論文では,当該の構文の分析としては,比較基準であるBに関してのみ「平均基準を越えている」という前提を持つ(真理条件的には)通常の比較構文である,と分析する代案のほうが観察される事実をよりよく捉えられることを示す。

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© 2012 日本言語学会, 著者
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