言語研究
Online ISSN : 2185-6710
Print ISSN : 0024-3914
フォーラム
“John walked over/under the bridge”に関する一考察
大谷 直輝
著者情報
ジャーナル フリー

2012 年 141 巻 p. 47-58

詳細
抄録

文のミニマルペアである,(i)John walked over the bridge.と(ii)John walked under the bridge.では,(i)が「ジョンが橋の上側を歩いて渡った」事態を,(ii)が典型的には「ジョンが橋の下の地面の上を歩いた」事態を表すと解釈される。(i)と(ii)には,(a)TRとLMの接触性,(b)LMの役割,(c)言語化されない地面の役割,(d)前置詞句の意味特性,(e)前置詞句の文法特性,という5つの非対称的な振る舞いが見られる。

 本研究では,(i)と(ii)を考察することで,反意語であるoverunderを含む文のミニマルペアから非対称的な振る舞いが生じる動機付けを身体性と百科事典的意味の観点から分析する。一般的に,overunderは反意語とされ垂直軸上で対称的な位置関係や動きを表すと考えられるが,人間が実際に経験する認識世界の垂直軸には様々な非対称的な特性が見られる。本研究では,この上下に関する異なる身体経験や百科事典的意味が,言語の意味と同時に文法的な振る舞いも動機づける点を明らかにする。

著者関連情報
© 2012 日本言語学会, 著者
前の記事 次の記事
feedback
Top