中国語などで観察され,重要な問題領域を作っている阻止効果について考察する。視点投射とそれにもとづく「自分」束縛のメカニズムを提示し,日本語で阻止効果が顕著に見られるのは「自分」の先行詞が「視点焦点」である時で,「意識焦点」が関わるケースで起こる「有意識条件」の効果と相補分布をなすことを示す。
本論の分析では,日本語に見られる阻止効果はエンパシーの制約の違反であり,これに関わるさまざまな言語現象についてKuno and Kaburaki(1977),久野(1978)などで「視点の一貫性」という概念のもとで分析された現象を,「基準クラス」の視点投射の「指標の一貫性」によって説明する分析を提示する。