言語研究
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特集 文献言語学
西夏語の3種の遠称指示代名詞の使い分けについて
荒川 慎太郎
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2015 年 148 巻 p. 103-121

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抄録
西夏語の遠称の指示代名詞(以下,遠称代名詞)は,先行研究において3種が指摘されているものの,その使い分けについては判然としなかった。文献中,出現頻度の高い順に,A1tha:, B2tha:, C2tha:とすると,AとBは同一音節で声調が異なり,BとCは同一音節で声調も同じである。 本考察では,遠称代名詞の使用例が多い西夏語仏典を資料とし,A~Cがどのような環境で現れるかを検証した。遠称代名詞に後続する要素に着目し,Aに後続するのは名詞,「~と」,「~に随い」,「~により」などを意味する後置詞,Bに後続するのは「~の,~を」,「~の上」,「~の間」,「~の所」などを意味する後置詞,のような傾向があることを示した。すなわち,A, Bは基本的に相補分布をなし,その使い分けが,それらに後続する要素の語彙的な違いによることを述べた。CについてはA, Bと異なる観点から検討し,先行研究に指摘されない前方照応的な機能を提示した*。
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© 日本言語学会, 著者
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