2016 年 150 巻 p. 87-115
本稿では,南琉球八重山語波照間方言(以下,波照間方言)の三型アクセント体系について論じる。これまで波照間方言のアクセントは主に二型アクセント体系とされてきたが,近年,三型(Ogawa and Aso 2012,小川・麻生2015),あるいは四型(松森2015a)のアクセント体系を持つという報告が相次いだ。本稿では,まず共時的なアクセント体系についての調査結果をもとに,波照間方言が三型アクセント体系を持つと主張する。次に,現在の波照間方言の各アクセント型に所属する語彙には語頭音による偏りが認められるという事実を報告するとともに,白保方言との比較から,そのような偏りが250年以上前から存在したであろうという通時的な分析の結果を示す。