言語研究
Online ISSN : 2185-6710
Print ISSN : 0024-3914
特集 言語対照の現在
言語類型論の観点から見た動詞範疇の相互作用
アンドレイ L. マルチュコフ
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2019 年 156 巻 p. 1-24

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抄録

この研究は,V.S. Xrakovskijの先駆的研究,ならびに筆者自身がおこなってきた,現在と完了のような動詞範疇どうしのあまりしっくりこない組み合わせに関する研究に続く形で,動詞範疇どうしのシンタグマティックな統語的組み合わせというテーマに取り組んだものである。この論文では,動詞の語彙的特徴と文法的特徴の間のしっくりこない組み合わせについて,特に,ヴォイス・結合価と他動性の組み合わせ,ならびに動作性と文法的アスペクトの組み合わせの2つに焦点をあてて論じる。具体的には,しっくりこない組み合わせを解決するシナリオが,文法標識どうしが機能的にしっくりこない場合のシナリオとして論証されているもの――ある場合は組み合わせが排除され,またある場合はそれぞれの範疇が再解釈される――と同じものであることを示すとともに,局所的な有標性の階層のような,文法範疇の制約に用いられるのと同じ手段が,結合価と動作性の領域において,語彙的特徴と文法的特徴の組み合わせの制約にも用いられることを示す。

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© 日本言語学会, 著者
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