言語研究
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論文
「潜伏疑問」の構造と派生
西垣内 泰介
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2020 年 157 巻 p. 37-69

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抄録

「潜伏疑問」の構造と統語的派生を示し,それに関与する統語的・意味的現象を明らかにする。本論文で主張するのは,「潜伏疑問」が「指定文」と平行した特性を持っているということである。「指定文」と「潜伏疑問」の統語的派生の中核となる「関数名詞句」と呼ぶ名詞句の構造を示し,「潜伏疑問」を「関数名詞句」から派生する統語的プロセスとその諸相について考察し,「潜伏疑問」の主要部,その統語的範疇について検討する。また,「潜伏疑問」が「疑問節の島」(wh-island)の制約の効果を示すことを指摘する。さらに,ある種の「指定文」に見られる「構造的連結性」(connectivity)の問題を考察し,その「構造的連結性」が「指定文」が「潜伏疑問」とそれに対する答えからなる構造を持つと考えることで解明されることを示す。「潜伏疑問」の意味的特性について考察し,それらが本論文で展開する統語的分析から帰結することを主張する。

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© 日本言語学会, 著者
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