言語研究
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フォーラム
時制交替の一般化再訪
――阿久澤・窪田論文に答う――
藤井 友比呂小川 大空小野 創
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2023 年 164 巻 p. 111-123

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抄録

先行研究において,時制交替の一般化(Tense Alternation Generalization,以下TAG)は日本語における時制節を含んだ繰り上げあるいはコントロールとされる構文を説明するために用いられてきた(Uchibori 2000, Fujii 2006)。Akuzawa and Kubota(2020, 2021),Kubota and Akuzawa(2020)はこの一般化を批判的に検討し,問題があると論じた。本研究は両氏のTAG批判のうち,(i)TAGに定位した日本語ヨウニナル構文の繰り上げ分析を支持するとされているデータは説得力に欠けているとの批判,および(ii)TAGの接近法が,両氏の提案する意味論的接近法と異なり当該一般化が説明を欠く措定的規定であるという弱点を孕んでいるとの批判に答えることを試みる。まず(i)を解決するために容認度判断実験を行い,被験者の判断がFujii(2006)の報告に沿っていることを示す。またTAGが措定的であるという(ii)の批判については,批判は正しいが,両氏の提案するコントロールの意味論的分析はTAGによる接近法が措定的規定に頼って説明した事実を説明しないことを示す。

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© 2023 日本言語学会, 著者
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