言語研究
Online ISSN : 2185-6710
Print ISSN : 0024-3914
論文
英語史における受動虚辞構文の発達について
本多 尚子田中 智之
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2023 年 164 巻 p. 93-109

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抄録

本論文では,英語における受動分詞を伴うthere構文,すなわち受動虚辞構文の歴史的発達の全体像を明らかにするとともに,特に関連要素の分布の変化について,VP内基底語順の変化と機能範疇Pred(ication)の出現に関連付けて説明することを目的とする。その説明に際して,Tanaka and Yokogoshi(2010)による小節の統語分析を拡張することにより,受動虚辞構文におけるbeの小節補部が機能範疇を持たない構造からPredを主要部とする構造へと変化したことを提案する。Predを主要部とする構造は14世紀に出現し18世紀に確立されたが,PredPの出現および確立により,後期中英語期に関連要素が受動分詞に先行する語順が優勢になり,関連要素が受動分詞の直後に来る語順が18世紀中に消失したという事実が正しく説明されると主張する。

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© 2023 日本言語学会, 著者
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