言語研究
Online ISSN : 2185-6710
Print ISSN : 0024-3914
特集 認知言語学の現在地と今後の展望
日本語における状態変化の表現
――認知的類型論の数量的研究――
松本 曜氏家 啓吾
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2024 年 166 巻 p. 29-57

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抄録

数量的アプローチによる認知言語学的な類型論的分析の試みとして,日本語の状態変化表現に関する研究を行う。BCCWJを用いた12の状態変化表現に関する調査結果を,移動事象表現の類型論と共通の枠組み(松本2017a; Talmy 2000も参照)によって分析する。その結果から,日本語では文の主要部が状態変化(あるいはその一部)を表すことが圧倒的に多く,特に状態変化を構成する「移行」と「結果状態」の両方を,一緒に主要部のみで表す場合が多いことを明らかにする。その点で,日本語は「変化主要部表示型言語」であり,移動事象表現が主として経路主要部表示型であるのと似ているが,状態変化表現の方が主要部の役割が大きいことを指摘する。また,主要部を用いるかどうかには,状態変化の種類によって大きな違いが見出されることを示し,日本語における語彙のレパートリー,さらに結果状態の性質などの観点からその説明を試みる。さらに,状態変化と「共イベント」の共起頻度が低いという観察に基づき,タルミーの類型論の限界を論じる。

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© 2024 日本言語学会, 著者
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