言語研究
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Print ISSN : 0024-3914
関連性理論によるHoweverの分析
スコウラップ ローレンス
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2005 年 2005 巻 127 号 p. 83-114

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抄録
Blakemore(2002)は,関連性理論の立場から,副詞的連結詞howeverの意味論分析を行っており,howeverは次の2種類の制約を持つ手続的意味をコード化するものであるとしている.(1)howeverでマークされた発話を解釈する際の,文脈効果の種類についての制約(具体的にはある想定の矛盾と削除)(2)その文脈効果が導かれるべき文脈についての,複雑で一部否定的な制約.
本稿では,このBlakemore(2002)の提案に対して,その代案となるよりシンプルな手続的考え方を提案し,その有効性を主張する.第1の制約はBlakemoreの(1)の制約と同一であるが,第2の制約は,先行する談話セグメントの明示的内容を肯定すると同時に,その肯定内容に対して,矛盾想定を推論的に結びつける,とする点で主張が異なる.
本稿の提案は,howeverとbutの交替可能性についての既知の制約に符合する.また,Blakemoreの提案と比較して,全体的なシンプルさ(アドホックな否定的条件をおく必要がなくなることなど)と,観察事実との一貫性という両方の点で勝れている.
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© 日本言語学会
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